なかなかWordPressが完璧に動かないで悩んでいたら、いつの間にか動くようになっていて気がついたら、8月が終わってしまいました。
何かあるたびにログ見て悩むのはめんどくさいですが楽しくもありますよね。
今回はとりあえず、今まで扱ってきたことのあるLinuxディストリビューションについてざっと特徴をまとめてみたいと思います。
注意してもらいたいことは、Linuxディストリビューションとデスクトップ環境(GNOMEやKDE)というのは別物であり、それぞれのディストリビューションで対応していたりしていなかったりするのでご注意ください。
2021/04/06 追記: 最近アクセス数が増えておりますが、内容はあくまで個人的な意見ということをご留意ください。
2017/09/30:編集
2018/09/07:編集
2020/01/31:編集
2020/10/25:編集
2021/04/06:編集
Debian系
Debian
これはUbutnuを使用する前後とラズベリーパイ(Raspbian)で使っていたのですが、GNUの精神の完全自由を目指すコミュニティベースのディストロです。
昔からあるディストリビューションですので、情報はかなり豊富です。パッケージリポジトリにあるパッケージ(aptなどでインストールできるソフトウェア)も豊富でわざわざビルドしなくて良いことが多いです。
ただし、自由の定義が他のディストロより厳格でオープンソースであってもDebian Projectが自由でないと判断したソフトはNon-Freeリポジトリに取り入れられる、名称が変わるなどされるため、混乱することがあるかもしれません。(FirefoxとIceweaselの関係がよく知られた例です。)デスクトップ環境環境はGNOME3やKDE Plasma Desktopなどおおよそのものは揃っています。
安定版のパッケージリポジトリから降ってくるソフトウェアのバージョンは古いです。バージョンが古いのが気になる方は、安定版ではなくtesting(次期リリース予定)か、”sid”と呼ばれる不安定版を利用されると良いと思います。この場合はバグに遭遇する可能性はありますが、testingはそんなに困る状況に陥ることは少ないと思います。パッケージメンテナーの方には日本人も多くいらっしゃり、OSCなどでお会いして話すこともあるため、そこで情報交換ができるかもしれません。
Ubuntu
Debianから派生した大規模なディストロです。Linux入門としてWindowsからの乗り換え先として有名で、以前はWindowsのサポートが切れると「Ubuntuへの乗り換える方法」なんて本が出ていました。
Unityというちょっと(名前と動作が)ややこしいUIを持っています。Windowsから来た人がこのUIに慣れるかでその後のLinux人生が決まる…かもしれません。GNOME3に移行しました。
ネットを漁れば情報は山ほど出てきます。初心者に優しく、GUIツールが充実しているのでCUIを知らなくてもなんとかなると思います。
パッケージのバージョンはそこそこ古いですが、Debianのsidと同じバージョンのパッケージが多いです。Debian同様安定性重視だと思われるので、問題が発生するのを極力避けたい場合には最適です。すぐに新しいパッケージが使いたい場合は開発版を使うか他のディストリビューションを利用しましょう。
デスクトップ環境はGNOME3以外にもLXDEやKDE Plasma Desktop、MATEなどをサポートしたフレーバーが存在しており、Kubuntuなどの名前がついています。
初心者の方にはおおよそおすすめできますが、チューニングが必要なPC・環境などでは別のディストリビューションを利用したほうが良いでしょう。
Linux Mint
Ubuntuに不満がある人が駆け込んでるイメージがあるディストリビューションです(個人の感想です)。上記2つのディストロより、非オープンソースに対して寛大で一部の音声コーディックなどが標準で入っています。標準デスクトップ環境のCinnamonは、GNOME3と違ってWindowsライクなUIで安心する人が多いようです。日本語環境も昔よりかなり充実しており、初心者の方も戸惑うことなく安心して使えると思います。GUIツールも豊富で大抵の設定はできると思います。おおよその知識はUbuntuやDebianの技術を流用できると思いますし、Linux Mint Japanのフォーラムもあるので、そこで質問しながら勉強していくと良いと思います。
Zorin OS
WindowsとそっくりのUIとMacとそっくりのUIを持つディストリビューションです。爽やかなUIが好感が持てます。ただし、有料版があるので、無料版に若干の機能制限がかかってます。日本語対応はバージョン9でかなり良くなりました。隠れたLinux入門の道と言うところでしょうか。
最近は使ってないのでもしかしたら変わっているかもしれませんが、Wine(Windowsアプリケーションを動かすためのライブラリ群)の調整がうまく行っており、3Dゲームも一発で動くことが多いです。
Red Hat系
CentOS
CentOS 8まではRHEL(有料)のソースコードから商標や商用パッケージが削除されたものを使用しているディストリビューションです(クローンではなく、CentOS独自の変更も存在します)。サーバー用途で使用されることが多く感じますがデスクトップ環境も利用できます。Linuxでサーバを構築したい場合には、サーバ関係の情報がネットに落ちているこのディストリビューションがやりやすいのではないでしょうか。
前述のディストリビューション同様安定重視ですが、バージョンはそれほど古くなく各アプリケーションのメインバージョンに近いものが降ってきます。
個人的な感想ではデスクトップ利用者はこちらより後述のFedoraの方が人気である感じがします。一方で大学などのラボではこれが使われている所を見ます。
2020年に方針転換があり、CentOSはCentOS StreamとなりFedoraとRHELの中間に位置する扱いになりました。サーバ用途では長期間の安定性を求める場合は別のディストリビューションに移行する必要があるかもしれません。
Fedora
かつて存在していたRed Hat Linux(現在はRHEL)の後継のような存在です。Red Hat社の支援を受けたコミュニティが開発しており、かなり活発に開発されています。パッケージ管理システムもDebian系列のdpkgと違いRPMを用いています。個人的にはUbuntuとFedoraがLinuxディストリビューションの双璧を成している感じがします。6ヶ月ごとにメジャーアップデートが行われ、パッケージのバージョンも新しいのが多いです。ここで変更によって得られた改善などがRHELに還元されることもあります。仕様変更も発生し、最近ではパッケージマネージャーがyumからDNFに変更されました。昔使っていたときより安定性が高くなってると聞きますが最近使ってないのでわかりません。昔自分が使っていた時、パッケージ依存関係がぶっ壊れたり起動しなくなったりと苦い思い出があるディストリビューションですが、パッケージマネージャも置き換えられましたし、ユーザも増えたので現在はかなり良くなっていると思います。通常のリリースに対してRawhideという不安定版があります。ただしこれは名前の通り結構な不安定で仮想マシンで動かしていたときは不具合が発生することもありました。Linuxの最新が知りたいという人には良いディストロだと思いますし、ある程度の知識が身についた後に長く愛用するディストリビューションとしては最適かもしれません。
Vine Linux
国産のディストリビューションであり、これが好感されることも多いです。フォーラムでも気軽に日本語で質問できますし、日本語環境はしっかり整っています。ただし、すべてのエラーメッセージが日本語であることではなく、もちろん英語のエラーメッセージも存在します。パッケージマネージャはAPT-RPMというdpkgのフロントエンドとして用いられるAPTをFedoraで使われているRPMに移植したものを使っています。開発はかなりゆっくりでメジャーアップデートも多くないのですが、最近は特に開発が停滞しているような気がします。Firefoxのバージョンも古いのでセキュリティ的な不安は残ります。
かつては人に勧めていましたが、今は勧めづらいです。
Berry Linux
軽量なディストリビューションです。描画が綺麗で、起動時の猫の写真はかわいく映ります。あまりつかったことがないので詳しい事はわかりませんが、シンプルで良さそうです。
Slackware系
openSUSE
現在サーバで使用しているディストリビューションです。
公式リポから降ってくるソフトは少し古いですがDebianほどではありません。
日本ではシェアが少ないですが、海外では多いため有名なソフトではopenSUSEでのインストール方法が書かれています。SlackやChromeなどのrpmパッケージはおおよそ流用できますが、Fedoraなどとパッケージ命名が違うこともあるので依存パッケージが多いと依存関係を手動で解決する必要があります。
Arch Linuxと同じくローリングリリースのTumbleweedがあり、最新のパッケージが落ちてきます。最新と言っても不安定版が降ってくることはあまりないのでおおよそ安定して使うことができます。デスクトップ環境は初期インストールではGNOME3かKDE Plasma Desktopの二択ですが、あとで他のデスクトップ環境に切り替えられます。デスクトップではTumbleweedで新しいパッケージを、サーバーは安定したLeapを使い、openSUSEで固めることでディストロ間の設定の仕方の違いで悩むことをなくすこともできます。
Yastがコントロールパネルのように強くまとまっています。
弱点としては上記の通り日本でのシェアが低いため、情報が見つけにくい、Slackwareの血を引いているので設定が若干難しい、などが挙げられます。
時期によってはパッケージの更新が滞っていたり、削除される(nginx-modulesとandorid-toolsが消えたのは痛かったです)などがあり、自分でビルドすることも多々あります。特にVLCの公式ページに置かれているopenSUSE用のパッケージが長らく更新されない時期がありました。
日本のコミュニティもありOSCなどにも参加されているので連携しながら対応していくのも手かと思います。
2021/04現在このサーバーはopenSUSEで動いてますが、特に問題はないです。
Puppy Linux(Ver.5以前)
起動時にワンワンと大音量でなってびっくりした思い出があるディストリビューションです。バージョン5以降はいろいろあってubuntu系になったそうですが、使っていないのでここでは述べません。
メモリ128MBでも動く軽さです。XP時代のPCでもなんなく動かすことができ、CDから起動するときは起動時にファイルをRAMに転送するようなので起動後にCDを取り出しても作業を続行することができます。ただし、最新のデバイスには対応していないので、そのような状況下では正常動作しません。自分はデータ救出用として重宝しています。
独立系
Arch Linux
Linuxについて調べていると必ず遭遇するArch Wikiでよく知られているディストリビューションです。組み立て型OSというべきディストリビューションでデベロッパーフレンドリーを掲げています。インストールはGUIインストーラが存在せず、CUI環境下で行います。インストール作業はそこまで難解ではなくむしろ自由で、インストール時に特殊なドライバーを入れたい場合はとても柔軟に行えます。ローリングリリースモデルを採用しているのでメジャーアップデートがありません。GUIだけで全てが完結することはまずないと思いますので、コマンドあたりの知識は必須となります。公式リポジトリも最新版のパッケージが利用されています。一週間使用しないと1000件のアップデートが溜まっていることもしばしばあります。
デスクトップ環境もおおよそのものは用意されています。Xorg環境の整備に若干戸惑うことはあるかもしれませんが、良い勉強になるでしょう。AURという非公式のパッケージ群もありそこからChromeなども手に入ります。(余談ですが、知識が古いのでyaourtがなくなってyayが主流になっていたことを知らなかったです、と書いていたらyayも古くなったとか…)
デベロッパーフレンドリーを掲げているために細かい微調整が必要になる部分があるため、環境構築にはじっくり時間をかける必要がありますが、自分好みに調整しやすいでしょう。
Solus Linux
よくSolarisと聞き間違えられますが、「ソーラス」です。デスクトップ環境専用ディストリビューションとして開発されており、かなりすっきりにまとまっています。重複したパッケージを導入しないという目標を掲げているようですが、様々な選択肢があるのがLinuxエコシステムの特徴とも言えるので、これに関しては微妙な気持ちになっています。
日本で常用している人はほとんど見かけません(自分は現在メインで使っていますが)。パッケージ管理システムはeopkgという独自のシステムですが、GUIのパッケージマネージャーを使うことでChromeやSlackは導入できます。落ちてくるパッケージは概ね最新版で不満はない程度ですがopenSSLなど一部古いものもあります。Budgieというデスクトップ環境を開発しており、モダンなデザインで扱いやすいものになっています(Budgie自体は他のディストリビューションでも利用できます)。
ibus-mozcが公式リポジトリに存在しないため、スクリプトを書いてパッケージリクエストを行いましたが途中で返信がなくなっているためリポジトリには取り込まれていません。そのため日本語環境は整っているとは言い難いです。しかしながらGNOME3やKDE Plasma Desktop自体は日本語化は十分なされているので普段使いで困ることはないと思います。追記(2020/10/25):mozcが追加されました。
(Pear OS)
今はなきディストリビューションで林檎じゃなくて梨です。要は林檎のそっくりデザインさんでして林檎社に食われて死んだという噂が流れています。軽くて快適でしたがアプリが案外少なかったと思います。ネットに情報が少なくどこの部類に入るか悩みますが、リポジトリがUbutnuのものだった気がするのでDebian系であると思います。消滅したディストリビューションですのでここでは一番下においてます。今でもインストールDVDは持っているのですが、UI部分のアップデートがなく不具合が起きそうなので使用しておりません。似たようなデザインのディストリビューションとして、elementary OSがあるので、使ってみてはいかがでしょうか。自分はelementary OSを使ったことがないのでここでは紹介しません。
まとめ
初心者におすすめしたいと思うのはLinux Mint、Ubuntuあたりです。
多くのOSでは安定志向が強いので古いパッケージが降ってきますが最初のうちはこだわらない限り気にならないでしょう。
紹介の中でパッケージが古いことを挙げていますが、安定して動くことを目的としており逆に最新パッケージを利用しているディストリビューションでは再起動すると起動してこなくなった…なんてこともありますので、利用者の方針に沿って利用してください。
なお、この記事は個人の意見なのであくまで参考程度で利用してください。
ほとんどのディストリビューションは無料ですので、慣れてきたら別のディストリビューションに挑戦するのも良いでしょう。